2023年7月13日掲載
これまで新型コロナに関して、いろいろ述べて来ましたが、今回は子宮頸がんワクチンについて考えてみましょう。
子宮頸ガンは、膣へと続く子宮の入り口部分の子宮頸部にできるガンで多様なガンの中でも非常に特異なガンです。詳しくは専門医に任せることにしますが、まず性交によるヒトパピローマウイルス(HPV)感染がガン発症の主たる原因であること、しかも発症が他のガンと比べ、20~30歳代後半と若く、出産世代と重なり合うことが特徴的です。
ウイルス感染が原因(全てではありませんが)ということで抗HPVワクチンが開発され、諸外国では積極的に思春期の初交前の接種が勧められ、多くの国々では子宮頸癌の発症は極めて低く抑えられています。
日本でも平成25年4月にHPVワクチンの定期接種が開始されましたが、接種部位に止まらない、広範な部位に持続する痛みの報告が相次ぎました。そのため、国は積極的な勧奨を差し控えるとのことになり、予防接種は我が国ではほとんど行われなくなりました。その結果として本邦では子宮頸がんの発症数は10,000人/年、死亡者は2,900人/年と諸外国と比較して、極めて多い状態にあります。
その後、専門家が議論を重ねた結果、安全性について特段の懸念は認められず、有効性が遥かに副反応のリスクを上回るとのことで積極的勧奨の差し控えを終了、令和4年4月より個別の勧奨を行うようになりました。
これまではガンと関わるHPVの2種~4種(それぞれ2価、4価ワクチンとよびます)しかカバーしていなかったワクチンに加え9種をカバーできる新しい9価ワクチン(シルガート®)を使うことができるようになりました。これで子宮頸がんの80~90%が防げます。
WHOではHPVワクチンの接種を推奨しており既に2022年12月時点では120か国以上で接種が行われています。
我が国では今年4月からシルガード®の小6から高1の女子の定期接種が開始されました。
HPVは粘膜や皮膚に感染するウイルスで200以上の種類があるそうです。HPVに感染しても約90%の確率で2年以内に除去されるそうですが、数年から数十年に渡って感染が持続すれば、ガンになることがあるかもしれません。
確かに注射の痛みや色々な副作用も指摘されてきました。親御さんの不安もよくわかります。しかし注射でガンを予防できるとなれば(ただしガン検診も大切です)ここは子どもさんの将来のことを考え十分に検討することは必要と思います。
私は内科医で子宮頸癌を診ることはありませんし、詳しくもありません。
しかし、子宮頸癌によって年間3,000人もの命が失われているのを放置しておくわけにはいきません。開業医としてできることなら予防接種に協力を惜しまないつもりです。
理事長 近江 徹広