2019年2月12日掲載
年が明けたと思っていたら、もう2月も半ばに差し掛かり、時の速さをひしひしと感じます。
今年は正月休みにほぼ毎日、高齢の方の看取りを行いました。ほとんどが老衰としか言えない最期でしたので穏やかな看取りと言えます。当院では毎年20人から25人くらい施設を含めて在宅で看取っています。
かかりつけ医としては、患者さんやご家族の希望に沿って診療を続けていく所存ですが、経過をみているうちに合併症を併発して入院が必要になることも、ご家族の事情から在宅医療が継続困難になることもあります。
在宅患者さんの場合、私は24時間対応ですが、思いもかけない急変に、かかりつけ医に連絡が取れず、家族が慌てて救急車を呼ぶこともあります。そのような時、救急隊も搬送先の救急医も、患者さんや家族の本意を図りかね対応に大変苦労することになります。
その結果、患者さん本人の意思や希望の推定が困難なため本人の意思や希望に反した医療行為や搬送が行われる可能性はありえます。
さて高齢に達すれば、人は病を繰り返し、最終的には死の転帰を迎えるのは自然の摂理です。終末期の定義は一様ではありませんが、病気の回復がこれ以上望めず、衰弱が進行した状態で自分自身の意思をきちんと表明できる人は多くはありません。
現在の超高齢社会では救急の現場ならずとも、今後いずれかの日に、終末期を迎える際にどのような医療行為を望むのか、望まないのか、きちんとした意思をあらかじめ現しておくことは必要なことです。
この活動はすでにアドヴァンスドケアプランニング(ACP)と言われ欧米先進国ではほぼ100%行われております。日本でも厚労省と共同して日本医師会も今後積極的に取り組むこととなりました。具体的には、かかりつけ医と本人、そして家族と前もって話し合い、いざという時を想像して、その際の医療行為に対する希望、意思を文書として残しておくことです。
もちろん、これも大事なことですが、文書はいつでも変更可能です。
私の元に臨床内科医会で作成した「私のリビングウィル」という小冊子がありますので、思い立ったら、いつでもご相談ください。
在宅医療は医師、訪問看護師、そしてケアマネージャーなど、患者さんによってはもっともっと多職種の人たちが関わります。チームワーク医療ですね。ACPの目的は患者さんのもしもの時の希望や意思をチームの中で確認し、その価値観を共有することにあるのです。