2013年6月10日掲載
皆さんはCOPDという病気をご存知ですか?
最近、TVなど、禁煙補助剤のコマーシャルなどで使われているので少しは知られているかもしれません。
慢性閉塞性肺疾患という病気を英語の頭文字をあててCOPDと読んでいます。
COPDというのは咳や痰で悩まされる慢性気管支炎や多少うごいただけで息切れがつよくなる慢性肺気腫のことをいいます。
咳や痰が頻回にみられ呼吸がくるしくなる呼吸器の病気というと気管支喘息はよく知られています。
喘息(ぜん息)は発作的に症状がでるのが一般的ですけど、始終発作をおこしていると慢性的に咳、痰、息切れがみられCOPDと鑑別がむずかしくなることはあります。また合併することもあります。
でも最近はぜん息は吸入剤が開発されかなり重症化がおさえられるようになりました。
10年くらい前には年間5000人がぜん息発作で亡くなっていましたが最近は2500人と減ってきています。
かわってCOPDがどんどん増えて最近の死亡統計では年間16000人とのことでぜん息の8倍になります。
ぜん息はアレルギー病の代表的疾患のひとつですが、必ずしも子供の病気ではなく、成人も高齢者にも多くみられ、もちろんタバコは症状を悪化させます。
一方COPDはその原因のほとんどがタバコです。
タバコをすいつづけていると気道(呼吸の際の空気の通り道、気管とか気管支など)に痰が
つまったり、また肺の弾力性がうしなわれ、その結果、気道がほそくなります。この状態を肺機能 上、閉塞性肺機能障害とよびます。
一般に喫煙者では40歳ころから閉塞性肺機能障害があらわれてきますが、症状がはっきりしてくるのはかなり高齢になってからです。
もちろん皆が皆、タバコのみがCOPDになるわけではありません。だいたい20%くらいではないかといわれています。
やはり高齢化社会になって最近めだってきたといえるでしょう。
問題はぜん息とちがっていまだ有用な治療法が確立されていないということです。
その結果、やがて肺の機能が低下して酸素療法が必要となり(呼吸不全といいます。ここ10年在宅で酸素療法をおこなう患者さんもたいへん増えています)肺炎をくりかえしたり 、心不全やそのほか多くの合併症に悩まされることになります。
最近はCOPDに対する治療効果が期待できる吸入剤の開発もすすんではいますが、やはり現時点で予後(病気の結末とでもいいましょうか?)は決して良くありません。
喫煙者はぜひ40歳になったら肺機能検査をうけてみてください。
クリニックにもある簡単な検査で、もし閉塞性肺機能障害がみられたら将来COPDに進行するおそれあり、さっそく禁煙を決意すべきです。
でも私は子供を含めた若者の禁煙教育の徹底が一番大切と思います。
あまり禁煙、禁煙というとまたか~という顔をされます。
でも中学で禁煙のはなしをすると、なかなか理解がむずかしいCOPDのはなしを真剣に聞いてくれます。その真剣な眼差しをみると子供達をタバコの害からぜひ守っていかねばならないという気がしています。
COPDという呼び方は一般の方々にもタバコの害をひろくわかってもらおうと呼吸器学会でも
力をいれています。でもまだまだそれほどひろがっているとは言い難いですね。
機会をみて私もCOPDについてはもっともっと啓蒙に務めたいと思っています。